企業担当者向けQ&A

Q 派遣業と請負業の違いは?

A [派遣業]派遣元の派遣会社が要求されるスキルを持った人材を派遣し、派遣先の会社が指揮命令を行いながら仕事を進めていきます。派遣社員の契約期間は職種によって上限3年の制限があります。

[請負業]請負業者が自ら雇用している労働者に指揮命令して仕事を完成させ、その結果の責任も請負業者が追います。継続して長期契約が可能で、期間の制限はありません。

 

Q 派遣元責任者・派遣先責任者は必ず必要ですか?

A 以下の通り、労働者派遣法で義務付けられています。

第36条(派遣元責任者)

派遣元事業主は、派遣就業に関し次に掲げる事項を行わせるため、厚生労働省令で定めるところにより、第6条第1号から第4号までに該当しない者(未成年者を除く)のうちから派遣元責任者を選任しなければならない。

第41条(派遣先責任者)

派遣先は、派遣就業に関し次に掲げる事項を行わせるため、厚生労働省令で定めるところにより、派遣先責任者を選任しなければならない。

 

Q 派遣できない業種はありますか?

A 以下は、労働者派遣事業が認められない業務です。

(1)港湾運送業務

(2) 建設業務

(3) 警備業法

(4) 病院・診療所等における医療関連業務

(5) 弁護士、社会保険労務士等のいわゆる「士」業務

(6) 人事労務管理関係業務のうち派遣先の団体交渉、労働基準法上の労使協定締結などのた

めの労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務

(7) 建築士事務所の管理建築士の業務

(8) 雇用調整により解雇した労働者が就労していたポスト(3ヶ月間)

 

Q 派遣可能期間はありますか?

A 派遣可能期間とは、同一の業務について労働者派遣の役務の提供をうけようとする期間(派遣受入期間)のことであり、派遣先と派遣元との契約期間のことではありません。派遣可能期間は、複数の派遣元事業所と契約しようとも、業種により制限がされているもので、派遣先が決めることになります。

派遣先はその決定については、その事業所の労働者の過半数を代表する者(労働組合があれば労働組合)の意見を聴かなければなりません。つまり、あまり長期の派遣可能期間(派遣受入期間)を設けると、もともとその会社(派遣先)に雇用されている従業員の雇用が危ぶまれるので、過半数代表者等の意見を聞くことになっています。

 

Q 派遣可能期間はどれくらいですか?

A 労働者派遣の業務によって派遣可能期間(派遣受入期間)に制限の無いものとあるものがあります。

1.派遣可能期間の制限が無いもの

(1) 政令業務は、派遣受入期間の制限を受けません。

(2) いわゆる有期プロジェクト業務(事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止に係る業務)も派遣受入期間の制限を受けません。

(3) いわゆる日数限定業務(派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下、かつ月10日以下の業務)も派遣受入れ期間の制限を受けません。

(4) 産前、産後、育児・介護休業等をする労働者の行っていた業務の代替も派遣受入期間の制限を受けません。

【法第40条の2第1項第1号の政令で定める業務】

4条1項1号 情報処理システム開発関係

4条1項2号 機械設計関係

4条1項3号 機器操作関係

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4条1項4号 通訳・翻訳・速記関係

4条1項5号 秘書関係

4条1項6号 ファイリング関係

4条1項7号 調査関係

4条1項8号 財務関係

4条1項9号 貿易関係(取引文書作成)

4条1項10号 デモンストレーション関係

4条1項11号 添乗関係

4条1項12号 受付・案内関係

4条1項13号 研究開発関係

4条1項14号 事業の実施体制の企画、立案関係

4条1項15号 書籍等の制作・編集関係

4条1項16号 広告デザイン関係

4条1項17号 OAインストラクション関係

4条1項18号 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係

5条1号 放送機器操作関係

5条2号 放送番組等の制作関係

5条3号 建築物清掃関係

5条4号 建築設備運転等関係

5条5号 駐車場管理等関係

5条6号 インテリアコーディネータ関係

5条7号 アナウンサー関係

5条8号 テレマーケティングの営業関係

5条9号 放送番組等における大道具・小道具関係

5条10号 水道設備等の設備運転関係

2.派遣可能期間の制限があるもの

上記以外の業務にあっては、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について最長3年まで継続して派遣を受入れることができます。ただし、1年を超えて引き続き派遣を受入れる場合には、派遣先は過半数組合等から意見を聴かなければなりません。

「同一の業務」とは、労働者派遣契約を更新して引き続き同じ業務を行なう場合のほか、派遣先における組織の最小単位において行なわれる業務も同一業務であるとみなされます。 また、新たに労働者派遣の役務の提供を受ける場合に、直前の労働者派遣との間が3ヶ月を超えないときは継続しているとみなされます。

派遣先の就業場所ごとの同一業務であれば、派遣元事業主や派遣労働者が変わったとしても継続していることになります。例えば、A社から8ヶ月間派遣労働者を受入れ、引き続きB社から同一の業務に派遣労働者を受入れる場合、B社からはA社の派遣期間と通算して派遣受入れ期間の制限を超えない範囲内で派遣を受入れることになります。

そのため、新たな派遣契約を締結する際には、派遣先は派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を派遣元事業主にあらかじめ通知しなければならないことになっています。

この派遣受入期間の制限に違反した場合は、派遣先は、指導、助言の対象となり、それにも従わないときは勧告され、更にそれにも従わないときは企業名等の公表がなされます。この場合、派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望している場合は、その派遣労働者を雇い入れるよう指導、勧告等がなされます。

業務別の派遣受入期間の制限】

(1) 「物の製造の業務」「一般業務」・・・3年以下

(2) 「有期プロジェクト業務」・・・プロジェクト期間

(3) 「育児休業等代替業務」・・・育児休業期間

(4) 「介護休業等代替業務」・・・介護休業期間

 

Q 派遣労働者を受入れるかどうか決めるとき、どのようなことを検討すべきでしょうか?

A 企業は、どのような人材を、どこに、どの程度、どのような方法で充足するかという雇用計画を持っているはずです。 全体の労働者の配置に照らして、派遣労働者を受入れることが適切かどうかを十分検討することが必要となります。

雇用計画は、通常、職種別、対象別(新規学卒、中途採用、派遣労働者、契約社員、パート・アルバイトなど)に作られますが、その中で派遣労働者はどの職種に、何人、どのくらいの期間必要かを検討することが必要です。

「人手が足りない」という現場の要求に応じて、まず、現場の意向と現状を十分把握したうえで、例えば次のような点をチェックすることが必要です。

(1) 企業や事業所全体の労働者の配置に照らして問題はないか。

(2) 正規従業員、パートなどの雇用形態別の人員配置から見て問題はないか。

(3) 派遣労働者を求める明確な理由はあるか。その業務は、臨時的・一時的か、突発的か、恒常的か、一般的か、専門的か。

(4) 労働者派遣法からみて、その業務の内容、受入期間、受入態勢などが適正なものか。

(5) 派遣労働者を受入れるのに必要な費用はどのくらいか。それは、適正かつ妥当なものか。

(6) どの職場、職種で、どの程度の知識・技術・技能を有する人材が必要なのか。

(7) 仕事の段取りや責任者の選定など、職場の受入態勢は整っているか。

(8) 職場の業務処理体制、人事管理などに問題はないか。

など、派遣労働者を受入れようとする場合は、まず、必要とする現場の状況を検討して適正な受入計画を策定することが大切になります。

 

Q 日雇いという働き方は全面的に禁止なのですか?

A 日雇い派遣は労働者派遣法により原則禁止となりました。直接雇用による日雇い労働は禁止されていません。

 

Q 派遣先からさらに別の会社に派遣することは許されますか?

A 二重派遣といわれ、許されません。

派遣先は、その派遣労働者と労働契約を締結しているわけではなく、単なる指揮命令権しか

有していません。派遣労働者を別の会社=第三者に派遣することは、その権限を逸脱し許されない事になります。

 

Q 派遣労働者の待遇はどのようにすればよいのでしょうか?

A 労働者の待遇は、賃金・労働時間・休日・休暇・昇進・福利厚生・諸手当て等さまざまなものがあります。派遣労働者は、派遣元に雇用される労働者ですから、その待遇は派遣元が責任を負うべきものが多いのですが、派遣元が派遣先の労働者との均衡に配慮した措置を講じようとする場合には、派遣先は必要な情報提供等の協力をするようにしてください。毎日、派遣先の正社員と共に派遣先企業のために働いている人達ですから、派遣先企業の配慮により、待遇がよくなれば、働きやすくなり、能率の向上等も期待できます。

例えば、派遣先企業内の食堂の優待利用・休憩室の利用・診療所の利用・保養施設の優待利用等(労働者派遣法第40条2項)が認められれば、派遣スタッフとしても気分良く働くことができ、能率も上がり、派遣先企業に対する忠誠心も芽生えることにつながるでしょう。

ところが、派遣先企業の中にはそれらの配慮がないばかりか、例えば、次のような例が見受けられます。

(1) 職場の配置図に正社員の名前はあるのに、派遣労働者は「H」とのみ記載されている

(2) 防災用具(ヘルメット等)を正社員にのみ配布し、派遣労働者には配布されない

(3) 派遣労働者にはロッカーが用意されない

(4) 派遣労働者の努力によって、仕事がより効率的にできるようになっても、評価されない

(5) 職場で盗難事件が発生したら、第一に派遣労働者に疑いをかけられた

(6) コンピューターのデータの消去を一方的に派遣労働者のせいにされた

これでは逆に、派遣先企業に対する忠誠心も仕事に対する意欲も限定的なものになってしまいます。一緒に働く人間の取り扱いに差をつけることにより得られるものと失うものを勘案すると、失うものの方が多いのではないでしょうか。
派遣労働者を含む短期雇用労働者が、不合理な差別的取り扱いを受けることのないよう留意することが必要です。